50代　男性
症状：唇のしびれ、感覚が鈍い、喋りにくい、動かしづらい

現病歴

2002年頃に下顎前突（しゃくれ）の手術を行い、その手術後から唇に痺れを感じるようになり、さらには動かしづらく喋りにくさが残ってしまった。
感覚も触った感覚や熱い・冷たいなどの感覚が鈍く感じる。
その後病院でも診てもらったが、もうこれ以上は改善しないだろうと半ば諦めて18年経過したが、ビートたけしさんの顔面神経麻痺を治療された劉先生の治療院では発症してすぐの顔面神経麻痺（ベル麻痺）だけでなく、数年前十数年前の顔面神経麻痺後遺症の症状改善も治療実績としてあることを知り、施術を受けてみようとドクター・リウ鍼灸院に来院された。

鑑別診断

顎の開閉が動かづらく、咬筋の緊張が左右ともに強くみられる。
顎関節から上顎神経の走行上で痺れと感覚の鈍麻がみられる。
さ行がしゃべりづらく口を動かしにくい状態で、下顎前突の影響か頚部がやや前傾しており、斜角筋群の緊張が強くみられる。
上記所見により、下顎前突の手術の後遺症による三叉神経障害と判断した。

治療法

1回目の鍼治療は、頚部の前傾が強いため、、斜角筋群中心にマッサージをし緊張部に単刺で鍼刺激をし、仰臥位では、顎関節周りと三叉神経走行上のツボに刺鍼して、顎関節の開閉の抵抗運動を行い重要穴に置鍼をした。置鍼後は再度抵抗運動を行い廉泉に刺鍼。口を開き顎関節付近の緊張部に刺鍼をした。
施術後、顎の開閉は楽なものの痺れや感覚は変わらず、関節の可動域をひろげることを目的とした自宅での顎の開閉の抵抗運動を指導した。
2回目の鍼治療は、1週間後。
前回と比べて顎の開閉のしやすさがあり以前より話しやすくなってきたが、痺れと感覚の鈍麻は変わらない。
施術のアプローチは前回と同様に行い、痺れが出ている上顎神経の走行の鍼刺鍼は前回よりも強めに刺激をした結果、さ行の話やすさが出た。
その後、1週間に1回の頻度で治療を継続し、5回目の治療で唇の感覚は戻り痺れも弱くなってきたことを実感されている。
話もスムーズに話すことができるようになって、現在も治療を継続中。

下顎前突の手術の際に顎関節からメスを入れて手術をした結果、顎関節付近の顎に繋がる神経の根幹がある部分を恐らく傷つけてしまったと考えられる。
手術から18年経って来院されたケースで、神経細胞自体も機能していなく後遺症と化して改善が難しいと感じたが、適切に鍼で筋肉・神経へアプローチし、抵抗運動で関節にアプローチをした結果、麻痺していた感覚の変化が見られた。
改善を実感できる状況にまで改善しているが、手術後であっても痺れや動かしづらさなどの異変を感じたら、すぐに治療を行ったほうが予後は良好だといえる。