女性　40代　会社員
症状：左突発性難聴
発症：2021年4月下旬

既往歴

3年前に子宮筋腫、薬物治療をして現在は経過観察中。
大動脈弁閉鎖不全症。

現病歴

来院される2週間前の4月下旬、夜中に突然左側の耳が詰まったように聞こえなくなって朝病院に駆けつけたところ突発性難聴診と診断され、そのまま入院となりステロイド剤の治療を受けた。
2週間が経った状態では耳の詰り感は少し緩和しているが、退院した当日の夕方から不定期で強い眩暈が出現し、生活しづらい状態になっている。
眩暈は横になっているとき以外は常に船に乗っているような不快感があり、歩くとき、頭を振ったときに突然強く眩暈がしてしばらく動けなくなる。
左耳はほとんど聞こえなくてキーンとする耳鳴りと詰り感がある。
病院の医師からは3分の1は回復するが、残り3分の2は回復しないか、ある程度後遺症が残ると説明され、これ以上の回復は難しく投薬を続けながら経過を観察するとなったため、ほかに方法はないか探していたところ、当院のホームページから突発性難聴の治療例を見て改善の希望をもってハリアップカレッタ汐留院に来院された。

鑑別診断

ちょうど1年前にコロナ禍になってから仕事が急増し、休みがなかなか取れず残業も多かったので強い疲労を感じることが続いたそう。
慢性的に体全体にむくみがあり、首肩周りと骨盤周りから足周りのむくみが酷く、常にむくんでいてむくみのある部分はだるさも強い。
上記の内容を踏まえ、疲れの蓄積、首肩の凝り、水分代謝が低下しやすい体質が原因でリンパの流れが悪くなり、耳の内リンパの病変を起こしていると判断した。

治療法

最初に、発症から2週間経過していること、全身の調整を行い体質の改善が必要なので治療には時間がかかることを説明し、納得してもらってからの鍼治療となった。

正確な病態把握と眩暈のせいで乱れた自律神経を安定させるため、お腹周りの軽いマッサージと中脘（ちゅうかん）・天枢（てんすう）などのツボに刺鍼した。
次に足回りのむくみ、骨盤内の血流改善のため足三里（あしさんり）・豊隆（ほうりゅう）・三陰交（さんいんこう）などに鍼とマッサージの施術を行った。
この時点で眩暈の気持ち悪さは少し緩和し、患者さんの呼吸が安定してきたことを確認。
首肩周りの血流改善を目的として、天柱（てんちゅう）・風池（ふうち）・上大椎（かみだいつい）などに刺鍼し、その他、自律神経の安静、全身の血流の調整を行った。
耳へのアプローチは、リンパの流れの改善と耳中の細胞を活性化させるため、むくみで詰まり感のある翳風（えいふう）・耳門（じもん）などに鍼をして耳内空気圧を調整する手技を行った。
最後は頭周りのマッサージを行い、脳にたまりがちな疲労の改善を図った。
ここまでの施術で耳の症状はまだ残存していたが、常に船に乗っているような不快感が大分改善され、久しぶりに歩いても眩暈を感じなくなったと言って頂いた。

2回目の治療は2日後に来院され、話を聞くと自宅に帰るまでは全然眩暈を感じてなかったが、帰りになってからまた眩暈を感じ始めて翌日にはもとに戻ったと話されたが、前回の治療後、良い方向に変化が表れたので肯定的に捉えてもらうことができた。
3回目を終えた頃には、頭を振らない限りに眩暈が起きなくなり、さらに耳の詰まった膜みたいなものが弾いたかのように少しずつ音が聞こえ始めるようになった。次第に詰り感が弱くなり、高い音が聞こえるようになったと話してくださった。
それからは耳鳴りの種類が高い音から低い音に変わり、、高い音は問題なく聞こえるようになってきた。

体質改善と共に鍼治療を始めて1ヶ月目、徐々に弱まっていた眩暈は完全に消失。
聴力も回復しはじめて2ヶ月の間、機械が回ってるような低い音の耳鳴りだけが残っている状態が続いていたが、それも徐々になくなり、時によって喪失するレベルまで回復。聴力が下がった左側から小声で声をかけても聞こえるようになった。
それと共に普段から重く感じていた、肩こりと足のむくみも改善し、鍼治療で体質改善できたことを喜ばれていた。

生活指導

塩分の多い食べ物はリンパの流れを悪くさせ、突発性難聴の治療にも影響するため、最初は難しくてもできれば低塩食にするよう指導した。
お酒、たばこは炎症をより悪化させることを説明し、リンパの腫れを悪化させないためにもなるべく控えること
耳周りの血流改善のため、耳とその周辺のマッサージを毎日実践してもらった。