40代 女性 会社員
症状:右顔面神経麻痺(ベル麻痺)
発症:2022年1月15日
現病歴
発症当日の朝起きてすぐに口元の動きの悪さに違和感を覚えて、午後出かける際に化粧をしていて眉が上がらないことから顔の筋肉が麻痺していることに気付いた。その後、時間の経過とともに徐々に目が重くなったり口元の動きが悪くなっていき、2日後には口に含んだ水がこぼれることや目の乾燥といった症状が出てきた。舌の右側はやけどしたような感覚がある。
症状発症前にこれといって体に負担がかかったことなど、思い当たることはないと話された。思い出せるとしたら、ベッドルームで閉めていたつもりだが窓の隙間から冷たい風が入ってきていたかもというくらい。
土日だったこともあり、病院に行かれる前でも早く治療をしたいと、ドクター・リウ鍼灸院 西新橋院に問合せされた。
鑑別診断
閉眼、眉の挙上、口角の引き上げ、口すぼめ、頬を膨らませる動作において、それぞれ左右差があり健側に引っ張られている状態。
めまい、耳鳴り、吐き気などはなく、顔面部や耳の周りの湿疹などは見られなかった。特発性の顔面神経麻痺と考えられた。
治療法
顔面神経の賦活化、首肩の筋緊張緩和、血流改善を目的に、顔面部の指圧マッサージと刺鍼、免疫力向上を目的に点灸を施した。
仰臥位では顔面部のマッサージと翳風(えいふう)、頬車(きょうしゃ)、下顎角下部に点灸し、翳風、顴髎(けんりょう)に置鍼を。
次に側臥位になってもらい風池ライン、上大椎(かみだいつい)、完骨(かんこつ)、角孫(かくそん)に単刺し、、首から肩にかけてマッサージをした。
最後に再度、仰臥位で廉泉(れんせん)、頬車、迎香(げいこう)、攅竹(さんちく)、陽白(ようはく)に単刺、地倉(ちそう)、瞳子髎(どうしりょう)に直下から四白に向けて横刺で鍼をした。
鍼治療を受けるのは初めてということもあり、翳風など顔面神経麻痺治療において重要なツボ、響きの出やすいツボはこれから刺激が入るということを伝えてから響かせた。
施術後、閉眼する際の目の周りの筋収縮は施術前よりも改善し、患者も目が軽くなったようだと目の周りの動きの変化を自覚されていた。冷たい風に直接当てないように気を付けること、マッサージは自身の示指で軽く翳風をマッサージするよう指導し、感覚を開けずに最初は治療することが神経回復のための近道となることを伝えた。
1回目(2022年1月26日)
麻痺している右側の顔面神経に対して、耳たぶ後ろの顔面神経根幹部から鍼刺激をすることで神経を回復させること。また、頚部や肩の筋緊張を緩和させることで顔面部への血流が改善され、神経回復の促進を図ることを説明し治療を開始。まずは仰臥位で細かい表情筋の動き、筋肉の硬さを確認し、各顔面神経支配領域の治療ポイントとなるツボに対して指圧マッサージをし、反応が強く生じている部分、翳風(耳たぶの裏)の少し下のコリのような詰まり箇所に置鍼を。次に、迎香(鼻の横)に対しほうれい線に沿うように横刺で置鍼。
その後は側臥位で、頚部と側頭部にマッサージをして、完骨(かんこつ)、風池(ふうち)、上大椎(かみだいつい)、角孫(かくそん)に刺鍼した。
1回目の治療後すぐに閉眼時に目に力が入るようになり、目尻が上がった。発症からすぐに鍼治療を開始できたこともあり、翌日以降も3日間続けての治療を行うことを共有し、早期の神経回復を図る。
2回目・3回目も最初と同様に表情筋の動きを確認し、顔面神経に対して指圧と鍼でアプローチを。翳風下のコリ、迎香に加えて、顴髎(頬骨の外側、目尻の垂線ライン)に置鍼した。
治療後、閉眼時の目の力が前回よりさらに強くなり、目尻にシワが出るようになり、口元の動き(イー)で口角が少し上がるようになった。
4回目(2022年1月30日)
口角がしっかり上がるように改善してきたため、ご飯が食べやすくなったと患者自身が日常生活で鍼治療の効果を実感し始めた。
その後は1週間に2回の治療を継続し、7回目の治療後には全体的に表情筋の動きが改善されていることを共有。顔面神経第3枝の動きが鈍いため、下顎の滞りがある部分に対し刺鍼を行った。
顔面神経麻痺を発症されてから早期に鍼灸治療を開始できたことに加え、入浴中にホットタオルで顔を温めたり、爪楊枝を30本束ねて目の下や口の周りをポンポンと刺激することなど、ご自宅でできることを積極的に続けてくださり、早い段階で症状が改善したと考えられる。
顔面神経麻痺治療において、後遺症で悩まないためにも早期治療開始が早期改善の鍵になります。