鍼を打つと、身体の中で何が起きるのでしょうか?
今回は、ちょっとだけ専門的な鍼灸の仕組みについて、分かりやすくお話します。
生理学のお話になりますが、がんばって、ついてきてください。お願いします。
誰でも子供の頃は、元気に駈けずり回って転んだり擦りむいたりする、些細なケガの経験があると思います。
出血までしなくとも、打ち身や捻挫で、青あざができる内出血ぐらいならどなたでも経験があるでしょう。
この時、身体ではどのようなことが起きていたのでしょうか?
私たちの身体は、ケガをした直後から、自動的に修復が行われます。
具体的には、血液の成分である『血小板』が、まず破れた血管を塞ぎ止血をします。
(内出血は、血液が身体の外に出ないだけで、皮膚の下では同じことが起こっています)
同時に同じく血液の成分である『白血球』が、ケガの箇所に集まってきて細菌や微小な異物を取り込み分解・消化します。
雑菌を退治した白血球は死んでしまいます。
カサブタができる前に滲み出てくる膿は、役目を果たした白血球のなれの果てです。ここまでが『生体防御機構』。
もうちょっとなので、がんばってついてきてください。
その後、ケガをした組織と同じ細胞が、増生され、補われ、もとの状態にかえります。
私たちの身体のほとんどの細胞は、ケガをしなくとも、古くなれば自動的に老化死滅し、新しい細胞が分化増殖してこれらを補っています(これが『生理的再生』)。細胞単位で、絶えず新陳代謝が行われているのですね。
鍼とは、この受傷から再生までの一連のサイクルを人為的に起こす行為です。
微細な侵害刺激(鍼で組織を極小レベルで破壊すること)をあえて与えることで、人体に備わった自然治癒力を発揮させているのです。
だったら画鋲なんかでも、刺しときゃ効果出んの? 自然治癒力アップすんの?
とか思ったあなた、それはイタいです。野蛮ですし無謀です(笑)
現在日本で使われている鍼は、滅菌されている使い捨てが主流であり、細さ0.1ミリからあります。
余談ですが、滅菌と殺菌では、殺菌の方が凄そうな感じの言葉に思えますね。
でも、滅菌とはあらゆる菌が存在せず、特定の菌が死滅されていることを保証した殺菌よりグレードの高い状態なのです。意外でしたか?
衛生的で極細の鍼は、知覚神経に捉えられずに人体に刺入することが可能です(つまり無痛)。
また感染症の恐れもありません(つまり安全)。
鍼は安全かつ痛みなく人体に備わった自然治癒力を引き出します。
今回お話しした生体防御の仕組みは、鍼治療の原理の全てではありません。
他にも鍼が引き起こす生体反応があるのですが、この続きはぜひ、実際に治療を受けて鍼灸師に尋ねてほしいと思います。