男性　40代　会社員（放送局プロデューサー）
症状：腰痛症
発症：2021年12月中旬

現病歴

初めに痛みが出たのは来院される2日前。朝に寝返りをしようとしたら、左の腰と骨盤の間から激痛を感じて一気に目が覚めてしまった。
発症2日前にゴルフの練習で普段とフォームを変えて打ちっ放しを1時間くらい打ち続けたせいか、痛くなっている部位が重だるく違和感が2日間残ったのが原因ではないか話したくださった。
左の腰と骨盤の間だけだった痛み、が来院時には徐々に広がり痛みの範囲が大きくなって、とくに大きな動作をしなくても痛みがあり、さらに左腰から腰全体が痛くなり痛みの場所を特定することが難しくなってきた。
月末に大事なラウンドがあるので、それまでにはなんとか改善させたいと思い、ハリアップカレッタ汐留院に来院された。

鑑別診断

来院当時、足を引きずるくらい腰痛が酷かったので動きの確認は無理のない範囲で行った。主にしゃがむことに対しての恐怖が強く、実際動いてもらうと前屈動作をしようとするだけでもかなりの痛みがある状態。
腰の関節損傷を図るケンプテストでは、やや痛みを感じるものの痛みの範囲が広くまともなテストができなかったため、主に痛みがひどくなる動作を中心として状態をチェックした。
発赤、発熱などの炎症所見は見当たらなく、歩く時痛みがお尻まで広がるタイミングもあるが基本的には腰のみが痛く、痺れがないこと、神経根の異常を確認するSLRテストが陰性であることから神経根を圧迫するヘルニアの可能性は低いと判断した。
腰部を含めて背中全体の筋肉の張り感が強く、背骨はどこを触っても強い痛みを感じる。さらに、股関節は日頃から硬くて足を組むことが多く、靴をよく引きずって歩く癖があると聞いたので、日頃から股関節と脊柱のバランスが良くないことを確認。最初の問診の段階では椎間関節症の痛みと筋筋膜性の痛み、どちらにも重点をおいて施術を開始した。

治療法

腰を反らす動作についてもやや痛みを感じているようだったので、お腹の部分にタオルを巻いて入れこみ、少し腰を浮かせたうつ伏せの状態で施術を始めた。
腰に症状があるとはいえ、急性の症状に対していきなり直接的な刺激は避けた方がいいと判断し、腰痛治療の重要なポイント、首から施術を開始した。
天柱（てんちゅう）、風池（ふうち）などの頚部のツボ、身柱（しんちゅう）、神道（しんどう）、膏肓（こうこう）などの椎間にあるツボを用いて、脊柱周りの緊張を緩和させ、脊柱の中を通る脳脊髄液の流れを良くし自律神経のバランスを整え鍼の効果を高めるようアプローチを。この時点で背骨を上から押した時の痛みが消失し、腰の筋肉に少しゆるみが出てきた。
さらに下肢へのアプローチ。腰の張りに関連の深い、後大腿部の殷門（いんもん）、臀部の（かんちょう）、ふくらはぎの承筋（しょうきん）などを中心として刺鍼、膝裏の委中（いちゅう）を刺激。
腰への負荷が大分減ってきたところで、腰に刺鍼を。志室（ししつ）、腰眼（ようがん）などのツボに、できるだけ痛みを感じないレベルで刺鍼し、体の自然治癒力を妨げない程度の刺激を与えた。
初回の治療では姿勢を変えることもつらそうだったが、施術が進むにつれてだんだん動きにゆるみが出てきて、最後は歩く際の痛みが大分軽減されていた。

急性の痛みの激しい腰痛は、治っていく過程での処置が大事であるため連日で施術を提案し、すぐ翌日に2回目の施術を行った。
当日夕方に痛みがすこしぶり返したそうだが、朝になったら先日施術が終わった時よりも痛みが軽減され、久々に良い睡眠がとれたと話してくださった。
2回目で痛みがほぼ半分くらいに軽減したので、前回より腰部にフォーカスしながら施術を。一週間後の5回目でこれまで通りの生活が送れるほどまで改善し、12月末、無事ゴルフラウンドに復帰された。

生活指導

靴を引きずったり、つぶして履く癖は、股関節をうまく使えなくなり、大腿部の筋肉を硬くさせてしまうこと、間違えた歩き方をして骨格の形成に悪影響を与えてしまうので即座に直してもらった。
痛みがある程度軽減した時点からは臀部、大腿部のストレッチを指導。
お腹の調子が常に悪く下痢しやすいため、自然治癒力を高めるために腹部を温かくし、腸内環境維持のためのビフィズス菌を摂って内臓のバランスを整えるように指導した。