60代 男性 経営者
症状:左顔面神経麻痺
現病歴
来院される2ヶ月前に左顔面神経麻痺を発症。
左口角が下がり、口を窄める動作、頬を膨らませる動作が困難。瞼が上がらない、目をぎゅっと瞑ることができない状態。
病院にて診察を受けたが特に起因となった明確な出来事はなく、発症直前に左側の顔面部がピリピリ感じ、後頭部が痛かったと話された。
仕事上人前で話す機会も多いため、一刻も早く治したいとのことでハリアップに来院。来院された当時は顔に元気がなく、弱っている状態が明らかだった。
ヘビースモーカーで飲酒の量が多いことが特徴。顔面神経麻痺の発症直前にコロナウイルスに罹患していたが、因果関係は不明。
本人の希望でステロイド投与はしたくないとのことで、発症して5日目から鍼治療を開始した。
鑑別診断
口角の引き上げ、口をすぼめる動きや頬を膨らます動きが悪く、強く閉眼、眉の引き上げ、それぞれで大きく左右差がみられた。
病院にて脳神経の検査をしているため、脳梗塞などの脳血管障害は除外。
発症前の耳の後ろの痛みや、特定の原因が不明なことから、特発性の顔面神経麻痺(ベル麻痺)と判断した。
治療法
まずは口角を中心に鍼施術を。
顔面神経麻痺根幹部にアプローチするため、耳の後ろにある翳風(えいふう)、口角横の地倉(ちそう)、頬車(きょうしゃ)、巨髎(こりょう)、小鼻横の迎香(げいこう)に鍼で刺激をし、4~5回続けたところで、左右差が気にならなくなった。
瞼の動きに対しては、鍼の刺激だけでなく指圧も入れて、筋肉の反応を見ながら、晴明(せいめい)、印堂(いんどう)、攅竹(さんちく)、魚腰(ぎょうよう)、太陽(たいよう)、承泣(しょうきゅう)に刺激した。
肩こりを自覚されていて、顔面神経麻痺を発症してから酷くなっているとのことで、3回目あたりから全身治療も追加し、顔面部の血流改善を促すよう治療を始めてから瞼の動きに変化がで始めた。
生活指導
自宅でのセルフケアは、目の周りのマッサージと頭皮のマッサージ、口の運動を指導。
なるべくストレスを減らして、治療中は嗜好品のお酒とタバコも控えるよう伝えていた。
投薬治療をされていなかったので、完治までに時間がかかることも想定していたが、発症後、治療を開始した時期が早かったこと。また、週に1回の鍼治療を約2ヶ月間しっかり続けたことが、早期完治となった。